マシュマロ実験とはどんな意味なのでしょうか?
マシュマロ実験の内容や追跡調査、実験結果についてまとめました。
マシュマロ実験とは?
マシュマロ実験とは当初、幼児期における自制心の発達調査を行うために行われました。
この実験は1960年代後半~1970年代前半に、アメリカの心理学者ウォルター・ミシェルによって実施されています。
最初のマシュマロ実験
最初に被験者となったのは、トリニダード・トバゴの民族。
ウォルター・ミシェルは、それぞれの民族が異なる固定概念を持っていることに着目し、実験を行いました。
【被験者】
学校に通う7~9歳の子供53人(黒人35人、東インド人18人)
【実験内容】
子供たちに今すぐ1セントのキャンディーをもらうか、1週間後に10セントのキャンディーをもらうか選択してもらう。
【実験結果】
民族や年齢による選択結果の違いは出たが、経済環境による違いはなかった。
ウォルター・ミシェルは、系黒人の子供には、父親がいないことが多く、東インドの子供には父親のいない子供は1人だけであったことから、この違いが自制心に関係しているのではと結論づけた。
スタンフォード大学で行われた実験
スタンフォード大学で最初の実験は、1970年にウォルター・ミシェルと、エッベ・B・エッベセンにより行われました。
最初の被験者は186人。
最終的にこの実験には、600人以上が参加しています。
実験の内容を簡単にまとめました。
- 4歳の子供を何もない教室に1人ずつ通し、イスに座らせる。
- マシュマロを1つ渡す。
- 「15分間マシュマロを食べずに我慢したら、もう1つあげる。マシュマロを食べてしまったら2つ目はあげない。」といい、子供を1人にする。
上記のようなシンプルな内容ですが、この実験により目の前の欲求を抑え、さらに大きな成果を得る、自制心を調査しました。
実験結果
実験結果は以下の通り。
- 3分の1・・・すぐに食べた。
- 3分の1・・・15分以内に食べた。
- 3分の1・・・我慢できた。
結局、3分の2の子供はマシュマロを食べてしまい、15分我慢できたのは3分の1でした。
子供たちの行動は隠しカメラで記録されており、行動を分析する以下のことが分かりました。
- 食べてしまう子・・・マシュマロを見つめたり、触ったりする子
- 我慢できた子・・・目をそらしたり、後ろを向いたりした子
追跡調査
心理学者ウォルター・ミシェルは、この実験に自分の娘を参加させており、この実験で判明した自制心の程度が、子供たちの今後の人生、成功するかしないかに強い関係性があるのではと感じました。
そのため、実験から18年後の1988年に、マシュマロ実験を受けた子供たちの追跡調査及び、大学進学適正試験(SAT)を行うことにしたのです。
我慢できなかった3分の2の子供と、我慢できた3分の1の子供では、我慢できた子供の方が、その後も自制心があり、周囲からもできる子だと認識されていることが判明しました。
また、大学進学適正試験(SAT)の点数も、我慢できた子の方が食べてしまった子よりも平均点がいい結果が出ました。
この追跡調査は23年後の2001年にも行われ、その後も自制心は継続していることが判明。
さらに、実験の参加者の大脳を撮影した結果、我慢できた子は集中力を司る脳の部位、腹側線条体と前頭前皮質が活発に動いていることが判明しました。
成績が良い人は自制心が強い?
先ほどの追跡調査の結果でも、我慢できた子(自制心がある子)は、周囲からの評価も良く、大学進学適正試験(SAT)の結果も良いという結果に。
食べてしまった子と我慢できた子の間には、大学進学適正試験(SAT)に点数の差は、平均で210ポイントの相違が認められました。
そのため、自制心の強さが試験の成績に影響すると結論が出たのです。
賢さと言えば、「IQ」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。
IQが高いと勉強ができる、成績がいいというイメージが強いでしょう。
ここで生まれる疑問は、我慢できた子の成績が良かったのはIQが高かったからではないか?というものです。
この疑問に関してですが、実験に参加した子供たちは、スタンフォード大学付属幼稚園の生徒で、IQに差はなく、全員優秀な生徒だったそうです。
そのため、IQに大きな差はなく、実験結果に影響はありませんでした。
再実験が行われた
マシュマロ実験は、大学関係者のみ、被験者はスタンフォード大学所属幼稚園の生徒のみだったため、限定的な調査に過ぎません。
そのため、実験結果に疑問があると考える人が出てきました。
再実験の内容
ニューヨーク大学のテイラー・ワッツ、カリフォルニア大学のグレッグ・ダンカン、ホワナン・カーンの3人が再実験を行いました。
【実施日】
2018年5月
【被験者】
900人以上(人種や民族、経済背景、両親の学歴などにおいてさまざま)
再実験の結果
再実験を行った結果、下記の2つが導き出されました。
- 我慢できた子は、裕福な家庭環境だった
- 自制心は、3歳までの家庭の年収と環境に依存する
裕福な家庭の子供たちは、約束を守ることで大きな成果や自分のプラスになったという経験があります。
そのため、マシュマロを我慢することで、次ももらえるという条件を無条件で信じることができるのです。
しかし、裕福ではない家庭の子供たちは、我慢したことで何かを得られたという経験がないことが多く、今我慢しても、次にまた、マシュマロがもらえるかどうか分からないと考えます。
さらに、貧困層の子供たちは、我慢している間に、誰かにマシュマロを奪われてしまうかもしれないと考えるため、すぐに食べてしまうのです。
このまま待っていたらマシュマロを誰かに食べられてしまうかもしれない。
2個目を待つことで、1つもマシュマロを食べることができなくなってしまう可能性を考えてしまいます。
そのため、2個マシュマロを手に入れるより、今手元にある1つのマシュマロを食べることを選択するのです。
このことから、子供の自制心は家庭の経済関係が大きく影響していると考えられました。
貧困と自制心の関係
貧困と自制心の関係は、2013年にハーバード大学の経済学者センディール・ムライナサンを中心とした研究チームがマシュマロ実験をふまえ、発表しました。
貧困という環境は、短期的報酬を求める傾向にあり、貧困の人は目の前の報酬が無くなることや誰かに奪われてしまうことをとても恐れているそうです。
そのため、長期的報酬よりも短期的報酬が安心できるとのことでした。
マシュマロ実験まとめ
1960年代後半~1970年代前半にアメリカの心理学者ウォルター・ミシェルによって実施された実験。
被験者は、スタンフォード大学付属幼稚園の186人。
その後、追跡調査や再実験などされていました。
再実験で分かったのは、自制心は家庭の経済環境の影響を受けるということです。