ピーターパン症候群とは?
ピーターパン症候群は、学問的な専門用語ではなく、通俗心理学の言葉、つまり一種の流行語のため、明確な定義はありません。
ピーターパン症候群の意味と由来
ピーターパン症候群は、 一般的に「年齢としては充分大人なのに、精神的に未熟なままの人」を指していいます。
ピーターパン症候群は心理学や精神医学の専門用語ではないので、病院で診察してもこの病名で診断されることはありません。
ただ、本人が苦しんでいる場合や、周囲がひどく困っている場合は、別の病名が付けられたり、カウンセリングを受けることを勧められたりすることがあります。
子供という言葉は、時に純粋さや無垢さを表現しますが、ここでは悪い意味です。
特に、自己中心的で他人の気持ちを思いやれない、堪え性がなく我慢ができない、また、母親などの身近な他者への甘えと依存が特徴です。
この症状に陥るのは殆ど男性である点も特徴の1つです。
アメリカの心理学者のダン・カイリー
ピーターパン症候群という言葉を初めて使ったのは、アメリカの心理学者のダン・カイリーで、1983年のことでした。
この言葉が誕生したということは、特徴的な症状がこの時期に大量に発生したということです。
最近またこの言葉を良く聞くようになったところを見ると、再び増えているのかもしれません。
ピーターパン症候群の特徴とは?
それでは、ピーターパン症候群の特徴について、詳しく見ていきましょう。
現実世界に目を向けない
多くの場合ピーターパン症候群の人は明確な根拠なしに「自分は優れている」と思っており、現実世界に目を向けない傾向にあります。
心理学者の速水敏彦はこのような実体のない優越感を「仮想的有能感」と名付けましたが、仮想的有能感には裏付けとなる根拠がないので、何度も何度も確認しないと不安になります。
ピーターパン症候群特有の甘えた気持ちも加わって、周囲の人にしつこく「僕って優秀でしょ」と確認します。
当然、煙たがられますが、多くの場合、本人は気付かないか、理不尽だと言って怒ります。
努力することが嫌いであきらめが早い
ピーターパン症候群の特徴として「努力することが嫌い」や「あきらめが早い」ということもあります。
これは、堪え性がなく我慢ができないという幼児性によるところが大きいのです。
しかし、そればかりでなく、前に述べたように根拠なく自分は優秀だと思っているので「やってみてできなかった」ということを恐れます。
自分の無能力さが証明され、自信が突き崩されてしまうことを避けようとするのです。
主観的な考えしかできない
ピーターパン症候群の人は自分の優秀さを危うくするような現実は否定しようとするため、主観的な考えしかできません。
現実の出来事、特に自分の将来に関することは、驚くほど楽天的に考え、危険なこと、自分が見たくないことは直視せず、リスクを無視してしまうので、問題は先送りになってしまいます。
そのため、直面せざるを得なくなった頃には取り返しが付かなくなることもしばしば。
嘘が多い
何か嘘をつくと、その嘘を補うために次から次へと嘘をつかなければならなくなる、という経験をした人は多いのではないでしょうか。
ピーターパン症候群の人は最初から「優秀な自分」という嘘を抱えているので、常に嘘をつき続けなければなりません。
また、依存的な性格で孤独に耐えられないので、周囲の人の注意を引くためにも多く嘘をつきます。
恋愛が下手
ピーターパン症候群の男性は恋愛に限らず、全般にコミュニケーションが苦手です。
家族や親しい友人など、自分を良く理解している人の間で居心地よくしているのを好み、積極的に外部の人とかかわろうとしないことが原因でしょう。
親しい人への甘えが、大人の人間関係の発達を妨げているのです。
彼らは、新たに出会った女性と会話することは極端に苦手であるにもかかわらず、心の中には明確な理想の女性像を持っています。
それは、自分を甘やかしてくれる過保護な母親です。
ピーターパン症候群の原因とは?
育った環境
家庭環境は重要です。
極端な過保護が、ピーターパン症候群を助長することがあります。
過去のトラウマ
トラウマとは、長期に渡って、場合によっては一生消えない深い心の傷のことです。
幼年期から思春期にトラウマを残す原因の1つに孤独があります。
両親から充分な愛情が得られなかったり、友だちの間で孤立したりすることがピーターパン症候群の原因になることがあります。
無根拠な自分の優秀さや人目を引くための嘘などは、孤独を回避しようという行為でもあります。
脳の発達障害
脳の発達障害も疑われる原因の1つですが、これにはまだ定説といえるものはなく、推測の段階です。
孤独に敏感な子供や感受性の強い子は、うまく育つと創造性や繊細さになるんだけどね
親の不仲
両親の不仲などで、家庭内が常に緊張していると、その家の子供がピーターパン症候群になることがあります。
「理想的な家庭」を探し続けていつまでも子供で居るのかもしれません。
ピーターパン症候群とアダルトチルドレンの違いとは?
アダルトチルドレンには「自分を否定的に評価する人も含まれる」ことが2つの言葉の違う部分です。
ピーターパン症候群とアダルトチルドレンの共通点は「問題を抱えた家庭で育ったことが原因で生き辛さを感じている」ことです。
ピーターパン症候群チェックリスト
以下のチェックリストは、ピーターパン症候群の提唱者であるダン・カイリーの作ったリストから、文化や状況の違いを考慮して、現代日本で有効と思われるものをピックアップして作成しました。
- 「ごめん、悪かった」の一言がどうしても言えない。
- 自分が遊びたいときは、他人も同じだと思いがち。
- 自分からは人の話や悩みを積極的に聞こうとしない。
- 自分の感情を表現するのが苦手。
- 自分と違う意見には耳を貸さない。
- 怒りを抑えられないときがある。
- 母親に頭が上がらない。
- 自分の能力が適正に評価されていないと思うが、その能力を証明しようとはしない。
- 普段はプライドが高いのに、突然理由なく自信がなくなることがある。
- 自分は優秀だという根拠のない物語を守ろうとする。
- 身勝手で、他人は自分に奉仕して当然というような甘えがある。
- 他人の気持ちが理解できない。
ピーターパン症候群は自分では気付きにくいものなんだ。
気付きたくないというかね。
このチェックリストも、カイリーは本人より周囲の人が使うように作ったんだよ。
ピーターパン症候群まとめ
ピーターパン症候群は人の気持ちを理解し、共感することができれば治ると言われています。
そのためには、自分に関する幻想を捨て、自分の弱さや悪さを直視する必要があるでしょう。自分の気持ちがわかるようになれば、自然と他人の気持ちもわかるようになります。